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みなさんこんにちは!今回は筋トレの実践について紹介します。
実践するには基礎も知っておかなければならないので、筋トレ基礎の記事も参考にしてください!
それでは、スクワットをマスターできるようにやってみましょう!!
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今回の記事はこんな人にオススメ!
- 下半身をしっかり鍛えたい
- 膝を痛めないスクワットがしたい
- スポーツで強くなりたい
- ダイエットしたい
スクワットとは?
スクワットという種目は、おそらくトレーニングの中で一番偏った考え方をされてしまう種目であると言われています。まずはスクワットの正しい知識をご紹介します。
正しいスクワットはケガをしない
まずみなさんに一番お伝えしたいことは、正しくスクワットを行えばケガはしません!
スクワットは見た目通りのキツいトレーニングです。膝や背骨に負担がかかりすぎるような方法でやってしまうと、すぐに痛みが出てしまいます。
膝や背骨ではなく、股関節と体幹の筋肉をうまく使うことでケガのリスクがなくなります。
スクワットは全身を鍛えるトレーニング
見た目は下半身しか使ってないように見えますが、そうではありません。
背骨を支えるために、腹筋などの体幹の筋肉をかなり使います。バーベルを肩に担いで行うバーベルスクワットでは、肩甲骨や肋骨の安定のために上半身の筋肉を使います。もちろん、バーベルの重さを支えるために体幹筋群もより使うようになります。
下半身の大きな筋肉から上半身の筋肉まで使うことで、消費カロリーも高まります。なので、ダイエットをしたい人もスクワットがオススメです。
スポーツ選手から高齢者までやるべき万能トレーニング
スクワットというものは、人間の自然な動作に当てはめることができます。
みなさんは、日常生活でしゃがみ込んだり、地面から立ち上がるといった行為を自然としていると思います。この自然な動作を鍛えるために、スクワットがあります。
特に重要な筋肉はポステリアルチェーンと呼ばれる下半身の背面にある筋肉たちで、ハムストリングス・臀筋・内転筋が該当します。これらを可動域いっぱいに、かつ強力な筋出力を発揮させるトレーニングはスクワットしかありません。
全身の筋肉をバランスよく鍛えることで、筋肥大や筋力増大が効率よく達成されます。スポーツ選手はもちろん、不自由のない健康的な生活を送るために、高齢者の方も積極的に取り入れることをオススメします。
スクワット=キングオブトレーニング
上記のように、スクワットを正しく行うことで得られるメリットがたくさんあります。これらの恩恵があるため、トレーニング業界ではスクワットをキングオブトレーニングと称しています。
正しいスクワットを実践しよう
それでは、スクワットを実践してみましょう!
写真を見てもらいながら、わかりやすく紹介していきます。
ロウバー・スクワット
肩周りに痛みなどがなければ、基本的にスクワットはバーベルや棒を肩に担いで行います。バーベルなどを使うことで、重心をとるための方法が身につきます。
バーベルや棒を担ぐ姿勢には2種類あり、ハイバー(High Bar)とロウバー(Low Bar)というやり方があります。肩の上部にそのまま担ぐ方法をハイバースクワット、それよりも少し下(肩甲骨の上縁)に担ぐ方法をロウバースクワットと呼びます。
今回の記事では、ロウバースクワットを紹介します。ロウバーにすることで、次のようなメリットがあります。
- 股関節周りの筋肉をバランスよく使うことができる
- 膝や腰に負担がかかりづらくなる
- 重心が取りやすくなる
1.股関節周りの筋肉をバランスよく使うことができる
スクワットで一番筋肉に負荷がかかるのが、お尻を床に下げた状態(ボトムポジション)から立ち上がる時です。ボトムポジションの時に、肩に担いだバーベルがどこにあるかが重要です。
ハイバーでは、ボトムポジションになった時にバーベルが足裏の前方に位置することが多くなります。この時、関節の位置の関係で大腿四頭筋と背筋の活動が高くなります。
ロウバーでは、ボトムポジションになった時にバーベルが足裏の真ん中に位置することが多くなります。この時は、ハムストリングスと臀部の筋肉の活動が高まり、大腿四頭筋や背筋とのバランスが取れるようになります。
ロウバースクワットを行うことで、股関節周りや体幹の筋肉を偏りなく使うことができます。これは後述する膝や腰への負担にも関係します。
2.膝や腰に負担がかかりづらくなる
膝関節は曲げる・伸ばすという1軸方向の動きがほとんどです。膝を曲げる時は主にハムストリングスが行い、膝を伸ばす時は主に大腿四頭筋が行います。
互いに拮抗し合う筋肉(ハムストリングスvs大腿四頭筋)のバランスが崩れると、膝関節に余計な負担がかかります。
ハムストリングスと大腿四頭筋が同じくらいの力を発揮させることで、膝関節の滑らかな関節運動が可能になります。ハイバースクワットにより大腿四頭筋が優位に働くトレーニングを続けてしまうと、筋出力のバランスが崩れて膝関節に負担がかかります。
また、ハイバースクワットはバーベルを支えるために背筋を強く使うことが多くなります。背筋の筋出力が高くなり、背骨が反るようになってしまうと、腰痛の原因になります。
3.重心が取りやすくなる
前述したように、ロウバースクワットはバーベルの位置が足裏の真ん中の直上に来るようになります。この状態であれば、余計な筋力を使わずに自分のバランスを取ることができます。
スクワットをやったことがない初心者でも、やりやすいと感じることができます。
ロウバー・スクワットを実践してみよう!
それでは、ロウバースクワットのやり方を順番に説明していきます。
バーベルなしで練習しよう
いきなりバーベルを担ぐと予想以上にバランスが取れないことがあるので、最初は自重で行います。
足幅は肩の一番外側と同じ幅に広げます。つま先は30°ほど外に開きます。
腰から上を若干前に倒します。この時、つま先に体重がかかりすぎないようにする。
両手を合わせて、お尻を落とします。なるべく太ももが床に対して平行以下まで落とします。
立ち上がる時は、上半身の前傾を保ちながら上げます。
バーベルを使ってみよう
自重でのスクワットができたら、いよいよバーベルを担いでやってみましょう!
軽く腰を落として上半身を前傾した姿勢で、肩の高さにバーベルがくるようにラックをセットします。
ロウバースクワットの担ぐポジションは、肩甲骨の上側にある出っ張っている部分(肩甲棘)のすぐ下に担ぎます。
バーベルの握り方は親指をかけずに手のひらの付け根で支える感覚です。
肘はなるべく曲げて内側に引き込み、天井に向けて上げるようにすると安定します。
バーベルを担いだら、ラックから数歩後ろに下がります。
間違っても前に出なければならないラックのセットはしないでください!
バーベルなしと同様にスクワットを行います。
キツくなっても顎を引いて目線は斜め前を見ます。
回数が終了したらバーベルをラックに戻します。
ラックから外れてしまうと大事故につながるので慎重に戻します。
ロウバースクワット実践中のポイント
- 足の幅は肩の外側に合わせ、つま先を30°程度開く
- バーベルは肩甲棘の下側で担ぎ、肘を締めて安定させる
- 床に対して大腿部が床より平行以下(フルスクワット)になるまでしゃがみ込む
- 立ち上がる時に腰が反らないように腹筋を締める
ロウバー・スクワットの理論(指導者向け)
これまではスクワットをやったことがない初心者や、これからバーベルを使ってやってみたいという方に向けてお話ししてきました。
ここからは、トレーナー向けに専門的な情報を紹介していきます。難しい内容になるので、興味がある方はご覧ください。
テコの原理
テコの原理は、支点・力点・作用点により小さな力で大きな質量を動かす物理学です。スクワットのみならず、筋トレやスポーツは物理学なしでは語ることができないくらい深い関わりがあります。
10kgのダンベルを持ち、頭上に挙上する動作がわかりやすいです。
肘を曲げながら上げるパターンと、肘を伸ばしたまま上げる(フロントレイズのような動作)パターンとでは、どちらがキツいと感じますか?
肘を伸ばした状態は、ダンベルによる重力(垂直方向の力)に加えて、モーメント(水平方向の力)が強くかかります。
モーメントとは、物体を回転させるときに発生する力です。よくある例が、巨大な岩を動かすために長い板を使う伝統的な方法です。モーメントが大きくなればなるほど関節を軸にしてダンベルが回転する力が大きくなるため、筋力が必要になります。
バーベルトレーニングにおいて、このモーメントは余計な負荷となってしまいます。モーメントをなるべく小さくする姿勢をとり、バーベルの重力だけ体にかかるように行うことが重要です。なぜなら、身体機能の向上やケガ予防のために必要だからです。
バーベルという重いものを肩に担ぐと、人体には垂直方向に負荷がかかります。物体を効率よく持ち上げるには、バーベルから受ける垂直方向の圧縮力からなるべく離れないように動くことが必要です。
スクワットでは、ボトムポジションにおいて膝や股関節が大きく動くため、垂直方向の圧縮力から離れることがあります。大きく離れてしまえばモーメントも大きくなり、腰や膝への負荷が高くなります。
ハイバースクワットはボトムポジションのときにバーベルの圧縮力がつま先寄りになり、股関節からバーベルまでのモーメントが大きくなります。同時に膝関節はより前方に移動します。脊椎を保護するために背筋群が過活動したり、脛骨の前方剪断力を抑制するために大腿四頭筋の過活動や靭帯に強い負荷がかかるようになります。
ロウバースクワットでは、ボトムポジションのときにバーベルの圧縮力は足の真ん中になります。股関節からバーベルまでのモーメントはほぼ0になるため、効率よくバーベルを挙げることができます。
ヒップドライブ
ヒップドライブとは、ボトムポジションから立ち上がるときに発生する股関節を伸展させるための筋力発揮です。
股関節の伸展は骨盤に対して脚を後方に出す動作で、ランニング・ジャンプ・バッティングなどあらゆるスポーツ動作に必要な動きです。股関節伸展に使われる筋肉は、前述したポステリアルチェーンの筋肉です。
筋肉は一度引き伸ばされてから収縮させるとより強い筋出力が出せる特性があります。これを「伸張−短縮サイクル」と呼ばれています。一流のバレーボール選手が高くジャンプするとき、助走後に急激なストップをしてから一気に股関節伸展動作を行っています。急激なストップにより下肢の筋肉が引き伸ばされ、その後に収縮することで強い筋出力を発揮できているため、3m以上も跳ぶことができます。
この特性は反射的に発生するため、伸張反射とも呼ばれています。
スクワットは、この筋肉の特性を活かしたポステリアルチェーンのトレーニングを漸進的に行うことができます。単純なジャンプトレーニングは、初心者や体力の低い人には困難です。スクワットであれば、自重から始めて徐々に負荷を増やすことができるため、安全です。
伸張性収縮によるトレーニング
先述した伸張-短縮サイクルは、筋肉の力の発揮の仕方で発生するかしないかが変わります。
筋肉は、大きく分けて3つの収縮様式(力の発揮の仕方)があります。
短縮性収縮・伸張性収縮・等尺性収縮の3つです。特徴を表でまとめました。
短縮性収縮 | 伸張性収縮 | 等尺性収縮 | |
英語名 | concentric contraction | eccentric contraction | isometric contraction |
筋肉の長さ | 短くなる | 長くなる | 変化なし |
収縮力 | ◯ | ◎ | ◯ |
スポーツ動作 | 使うことがある | よく使うことがある | 使うことがある |
伸張反射 | なし | あり | なし |
筋肥大効果 | ◯ | ◎ | ◯ |
これらの収縮様式は、複雑に連動して体を動かしています。どれか一つだけ行うことはほぼできません。
トレーニングによっては、ある程度収縮様式が変化します。
わかりやすい例は、一昔前に流行ったいわゆる”体幹トレーニング”と呼ばれる腹筋を締めたままプランク姿勢を1分維持するといったものです。これは、筋肉の長さが変わらないので、等尺性収縮です。
ですが科学的にみたときには、筋肉を大きくしたいトレーニーも、スポーツパフォーマンスを上げたいアスリートも、伸張性収縮が必要であることがわかります。表をもう一度みてください!
スクワットは、ヒップドライブによって伸張性収縮を使ったトレーニングが可能です!
スクワットの実践ができてきたら、重さや回数の設定も合わせてトレーニングをしてみましょう。過去の記事を参考にしてみてください。
参考文献
スターティングストレングス Mark Rippetoe (著), 八百 健吾 (監訳) 2019.4.5
Farthing, J.P., Chilibeck, P.D. The effects of eccentric and concentric training at different velocities on muscle hypertrophy. Eur J Appl Physiol 89, 578–586 (2003). https://doi.org/10.1007/s00421-003-0842-2 https://link.springer.com/article/10.1007/s00421-003-0842-2#citeas