スクワットで「急に上がらなくなる瞬間」を経験したことはありませんか?
そのとき多くの人は、無意識のうちにフォームを崩し、体をねじったり、膝を内側に入れたりといった代償動作を使って何とか挙上しようとします。
しかしこの代償動作は、重量を上げられなくなるだけでなく、ケガのリスクを高める原因にもなります。
本記事では、スクワットの挙上困難局面で生じやすい代償動作を運動学・筋機能の観点から整理し、改善戦略を提示します。
hiro
今回の記事はこんな人にオススメ!
- スクワットが苦手
- スクワットが伸び悩んでいる
- ケガをしないトレーニングを学びたい
挙上困難時に出現しやすい代表的な代償動作と改善方法
①お尻が先に上がってしまう
状態
立ち上がる局面でバーの挙上が難しくなり、バーより先にお尻が上がり、その後に上半身が上がってくる状態です。


原因
原因として、体幹の安定性と股関節伸展(脚を後に伸ばす動作)の連動性が取れていないことがあげられます。
初心者の場合、腰を丸めて無理やり挙げようとするケースが多いです。
改善方法
修正方法として、ボトムポジション(一番下にしゃがんだところ)にきたら「肩もしくはバーから上に引っ張られるように挙げる」感覚で行います。
②内股になってしまう
状態
立ち上がる局面でバーを上昇させることが困難になったときに、膝が内側になり内股になってしまう状態です。


原因
挙上させるために内転筋を過度に使ったり、膝を伸ばす動作を誘導するために内股になってしまいます。
パワーリフティングのような高レベルの選手になると、挙上重量に対応するためにわざと内股になる場合もあります。
改善方法
膝にチューブを巻いて膝を外側に開く感覚で行うと、過度な内転筋の作用が減少します。
もしくは、足の外側にパッド等を設置し、膝の軌道を調整すると、視覚的に動作改善が図れます。
③お尻が斜め方向に移動してしまう
状態
立ち上がる局面で左右どちらかの臀部が先に上がり、その後反対側の臀部が上がるという状態です。


原因
両側の膝の伸展が同時にできなくなり、どちらかの膝を片方ずつ伸ばそうとします。
人間は両足で発揮する筋力よりも、片足で発揮する筋力の合計の方が大きくなる傾向があります。
挙上が困難になるくらいの重量になると、発生しやすいエラーです。
改善方法
鏡の前に立ち、自分の臀部や重心が左右にずれていないか視覚的に確認する。
④胸と腰が反ってしまう
状態
立ち上がる局面で背骨の保持が崩れてしまい、腰や胸が反ってしまう状態です。


原因
体幹筋による背骨の保持が困難になり、背筋の筋力によりバーを上昇させようと代償します。
背筋の力がさらに強くなると、肋骨が外旋(肋骨下部が開いて胸が張ってくる)して胸郭が後傾してしまいます。
改善方法
体幹筋の保持力を高めるために事前にコアトレーニングを行う。
スクワット実践中は、みぞおちとおへその間が開かないように腹圧を高める。
⑤あごが上がってしまう
状態
バーを上昇させることが困難になったときに、あごを突き上げて頸部を伸展させて上昇させようとする状態。
④の胸や腰が反ってしまう要因にもなり得ます。


原因
④の原因と同じで、胸郭を後傾(胸を張る状態)させて背筋の力を過度に動員しようとすると発生します。
改善方法
目線を斜め下方向に固定したまま挙上する。
なぜ代償動作が起きるのか?
人間の運動機能は「目的達成重視」になっています。
スクワット=しゃがみ込みをすると脳が命令を出したら、カラダはその命令に従って筋肉を動かします。
人間がしゃがみ込むという動きは、膝や股関節の正常な関節運動、適切な筋肉の出力による姿勢制御といったコントロールを無意識に行なっています。
ここで、もし筋肉の出力がアンバランスになってしまうと、人間はしゃがみ込みができなくなってしまうのでしょうか?
答えはNOです。
痛みがない限り、人間は代償を払って目的を達成しようとします。
しかし、その代償は関節や靭帯に大きなダメージを与え、いつしか痛みとなってしまいます。
痛みが出なくても、効率のよい筋出力や関節運動が破綻するので、挙上できる重さも低下します。
みなさんは「本当に正しい動作」でスクワットができているでしょうか?
次は本当に正しい動作で行うスクワットを目指した補助トレーニングを紹介します。
代償動作を防ぐための補助トレーニング
コアトレーニング
目的
体幹筋、特に内腹斜筋や腹横筋は姿勢制御を行う筋肉です。
内腹斜筋や腹横筋が正しく機能することで、股関節にある筋肉の力を背骨に伝達し、効率よくバーベルを挙上することができます。
また、背骨を保護するためにも、内腹斜筋・腹横筋の力が必要となります。
方法
- 四つ這いの姿勢になり、両手に体重がかかるようにする
- 頭と胸郭が下がらないようにする

- 鼻から息を吸って、口から長く吐く(8秒ほど吐く)
- 息を吐いたときに背骨を丸め、腹筋に力が入るようにする
- 尾骨を下に向けるように骨盤を後傾させる
- 姿勢を維持したまま呼吸を5回繰り返す
- 5回呼吸を2〜3セット行う

ルーマニアンデッドリフト
目的
正しいヒップヒンジ(股関節の屈曲&伸展動作)を覚えることで、スクワットに必要な股関節周囲筋と体幹筋の連動性の獲得や、臀部筋とハムストリングスの活性化を目指します。
方法
- 足を肩幅程度に開き、直立姿勢をとる
- 両手は腰に添える


- 臀部を後方に突き出しながら、上半身を前傾させる
- このとき臀部ともも裏の筋肉が伸びている感覚をつかむ
- 開始姿勢まで戻す
- 動作を8〜10回、2〜3セット行う

- 両手でバーベルを持ちながら行う(オーバーハンドグリップ)
- 上半身を前傾するときは、バーベルが膝の前を通過すると良い


ゴブレットスクワット
目的
スクワットの正しいフォームの獲得と、体幹筋の活性化のために行います。
方法
- スクワットと同じ間隔で足を開いて立つ
- 胸の前で両手を合わせる
- 上半身を20度ほど前傾する
- 脇を締めて肋骨下部(脇腹あたり)に力が入るのを感じる


- 上半身の前傾を維持したまま、フルスクワットを行う
- 肘の外側が、膝の内側に触れるようにする
- 動作中は腹圧が抜けないようにする
- 動作を8〜10回、2〜3セット行う

- 両手でダンベルなどを持ちながら行う


まとめ
- スクワットが挙上困難になったら代償動作が出ていないか確認する
- 代償動作を繰り返すと痛みやパフォーマンスダウンにつながる
- 補助トレーニングで正しい動作のスクワットを獲得する
