みなさんこんにちは!
スポーツをしている人にとって、速く走ることはとても重要です。
ほとんどの球技スポーツは、ボールや相手に負けないように速く走り、ゴールを目指します。球技スポーツ以外でも、速く走ることのメリットはたくさんあります。
今回は、スポーツ選手なら知っておきたい速く走るためのトレーニングを紹介します!

hiro
今回の記事はこんな人にオススメ!
- スポーツの競技力を向上させたい
- 速く走るためのトレーニングが知りたい
- 最新のスポーツ科学に基づくトレーニングがしたい
走るを科学する
まずは、走ることとはどういうことなのか?
健康な人であれば子供のころから走ることができるので、ちゃんと意識して走ることを学ぶ人は少ないです。
まずは走ることとはどういうことなのかを、科学的に説明します。
走る=片足シャンプの連続
二足歩行である人間が走ることは、超カンタンに言うと片足ジャンプを左右交互に連続して行うことです。
右足が地面に着いている時は、左足が空中に浮いてます。左足が地面に着く前に右足も空中に浮き、両足が空中に浮いている状態=ジャンプが起きます。
つまり、走っている時は必ず片足となるのです。
歩くと走るは違う?
走ること=片足ジャンプを連続で行うことなので、常に片足で動かなければなりません。
反対に歩くこととは、両足が地面に着いていることが条件です。つまり、歩くときには片足と両足で動かし、ジャンプはしません。
余談ですが、陸上競技の競歩という種目は、文字通りいかに速く歩くかを競います。走ってはいけないので、どちらかの足が常に地面に着いたまま歩くことがルールとされています。

速く走れる人の走りかた
人間は直立二足歩行なので、車のタイヤのように回転を速くすれば速くなるとはなりません。
速く走れる人の走りかたを、科学的にみてみましょう!
- 足の回転はカラダの前側で行う(フロントサイドメカニクス)
- 片足立位時の鉛直方向への力発揮を最大にする(ヒップロック)
- 骨盤が過度に前傾・後傾しない
❶足の回転は体の前側で行う(フロントサイドメカニクス)
走る姿を横から見たときに、足の回転の軌道が重心線より前になることが良いとされています。
足の回転が重心線より前になると、ハムストリングス(もも裏)の筋力発揮が強くなり、カラダを前方に進める推進力を大きく得ることができます。
また、ハムストリングスをより効率よく使うために、シザース(挟み込み動作)を正しく行うことも大切です。シザースとは、両足が空中に浮いているときに、右足と左足が前後に入れ替わることを言います。
シザースのタイミングが遅くなると、反対に大腿四頭筋(前ももの筋肉)が強く使われてしまい、前方への推進力が得られません。
この理論をフロントサイドメカニクスと呼びます
地面から離れた足が前に振り出され、膝下が前に出るとハムストリングスはとても強い力で膝下を戻そうとします。膝下がカラダの真下付近に戻され、地面についたときに前方への強い推進力が得られます。
このハムストリングスの強い力を発揮させるメカニズムを、ストレッチショートニングサイクル(SSC:Stretch-shoretning cycle)と呼びます。

❷片足立位時の鉛直方向への力発揮を最大にする(ヒップロック)
鉛直方向とは、地球の重力に向かってかかるチカラの方向です。一般的には真下と思ってください。
走る姿を後ろから見たときに、地面に着いている足と反対側の骨盤が平行以上に上昇することで、地面に着く足の鉛直方向への力発揮が高くなります。
走ること=片足ジャンプです。片足でジャンプするくらいの強い力を出すためには、全身の筋肉をうまく使わなければなりません。
地面に着く足と反対側の骨盤が平行以上に上昇することで、地面に着く側の臀部筋と、反対側の腹筋・背筋に大きな力を出すことができます。
この理論をヒップロックと呼びます。
ヒップロックは特にスタートダッシュのときに重要です。

❸骨盤が過度に前傾・後傾しない
フロントサイドメカニクスやヒップロックを実行するためには、骨盤のポジションを正しくしなければなりません。
特に気をつけるのは、骨盤の過度な前傾です。
骨盤の前傾が強くなると、ハムストリングスの筋力発揮が小さくなり、推進力が得られなくなります。その分、より前に進もうと頑張りすぎると地面をけり過ぎてしまいます。どんどんと足を前に戻せれなくなり、さらにハムストリングスが使えなくなる悪循環になります。
よく「足が流れている」と言われる走りかたです。
反対に骨盤を後傾しすぎてしまうと、臀部筋の筋力発揮が小さくなります。ヒップロックができなくなるため、片足の鉛直方向への力が小さくなります。
足の動きの中心となる股関節を正しく使うために、骨盤のポジションも気をつけましょう!
遅く走ってしまう人の走りかた
速く走れる人とは反対の動きをしてしまうと、走りが遅くなります。
- 足の回転がカラダの重心線より後ろになる=足が流れる
- 片足立位時に鉛直方向への力が小さい
- 骨盤が過度に前傾・後傾している

速く走るためのトレーニング
それでは、速く走るために必要なトレーニングを実践してみましょう!
骨盤ポジションの修正
まずは、骨盤の正しいポジションを獲得しましょう。
骨盤(股関節)が正しく使えないと、この後にやるヒップロックやフロントサイドメカニクスのトレーニングが正しくできません。
骨盤の正しいポジション=ニュートラルポジションを獲得するには、腹筋や股関節の筋肉をバランスよく使えるようにしましょう。
ほとんどの人は腹筋(腹斜筋・腹横筋)・臀部筋・ハムストリングスの発揮がニガテになりやすいです。これらの筋肉たちを正しく使えるようにするトレーニングを紹介します。
腹斜筋・腹横筋活性化トレーニング
- 四つ這い姿勢になり、手の真上に肩、膝の真上に臀部がくる
- 肩上部や首はリラックスさせて首を長くする
- 両手に体重をかける
- 鼻から吸って口から息を吐く
- 息を吐きながら背骨を丸め、尾骨を下に向ける
- 息を吐いた時に腹筋に力が入るのを感じる
- 姿勢をキープしながら呼吸を5回繰り返す
デッドリフト
デッドリフトは骨盤と背骨を正しいポジションにするために必要な筋肉を使います。具体的には、ハムストリングス・臀部筋・腹筋群をメインに使います。
腹斜筋・腹横筋の感覚をつかみながら、デッドリフトを行いましょう。
デッドリフトの詳細は別の記事を参考にしてみてください!
ヒップロック
ヒップロックとは、片足立ちの際に地面からの反力を効率よく使うために考えられた理論です。
支持脚側(地面に着いている足)の臀部筋と、遊脚側(空中に浮いている足)の体幹筋群を同時に使うことが重要です。
筋肉の感覚をつかみながら、トレーニングのレベルを徐々に上げていきましょう。
Level.1 膝立ち
- 体側を壁に向けて、壁際に両膝立ちになる
- 両手を壁に添え、壁側の体幹を若干曲げる


- 壁側の足をまっすぐ前に出す(膝下が外に出ない)
- このとき壁側の横腹に力が入ると良い(腹斜筋・腹横筋を使う)
- 動作を10回繰り返す
- 反対側も同様に行う



Level.2 片足立ち
- 体側を壁に向けて壁際に立つ
- 壁側の手を添え、反対の腕を天井に向けてあげる
- 壁側の足をもも上げし、股関節90度くらい上げる


- 壁側のももを90度より高く引き上げ、同時に天井に向けた腕を壁に向けてたおす
- このとき壁側の横腹と、地面についている足の臀部に力が入ると良い(腹斜筋・腹横筋・臀部筋を使う)
- 動作を10回繰り返す
- 反対側も同様に行う


Level.3 片足立ち切り返し
- 直立姿勢から、右手を天井に向けてあげる
- 左足をもも上げし、90度より若干高く上げる
- この時点で、右の横腹と左の臀部に力が入ると良い


- 左右を素早く切り返し、左手を天井に向けてあげ、右足をもも上げする
- 左足が地面に着くとき、左膝が曲がったり、バランスを崩したりしない
- 動作を10回繰り返す
- 反対側も同様に行う


Level.4 ウォールドリル
- 壁から少し離れたところから、両手を壁につけてカラダを斜めに傾ける
- このとき頭からかかとまで一直線になるようにする
- 右足を高くもも上げし、右骨盤を左骨盤より高くする
- このとき右の横腹と左の臀部に力が入ると良い
- 左右を素早く切り返し、左足をもも上げする
- 右足は、地面を押すように意識して接地する
- 動作を10回繰り返す
- 反対側も同様に行う
Level.5 マーク走
- スタートラインから自分の足3歩くらいのところからマーカーを置く
- 1個目のマーカーから、さらに足3~4歩くらいの間隔でマーカーを置く
- 合計3~5個マーカーを置く
- マーカーの間に足が着くように、スタートダッシュする
- 横腹と臀部の筋肉を使うように意識する
フロントサイドメカニクス
フロントサイドメカニクスは、ハムストリングスによる強力な前方推進力を得ることと、スプリント中のシザース(挟み込み動作)を正しく行うことの2つがポイントとなります。
Level.1 フロントランジ
- 両手を合掌し、直立姿勢をとる
- 右足をもも上げする
- このとき、ヒップロックを意識する(右横腹・左臀部の筋肉を使う)
- 右膝下を若干前に出し、そのまま右足を地面につける
- このとき、上半身は45度くらい前傾する
- 右足が着地するとき、右膝が前に出過ぎたり、上半身が倒れ過ぎたりしない
- 右足のハムストリングスや臀部筋に力が入ると良い
- 動作を10回繰り返す
- 反対側も同様に行う
Level.2 スプリットジャンプ
- フロントランジと同様に、右足を前に出したランジ姿勢をとる
- 空中で左右の足を切り返し、左足を前にして地面につける
- 上半身の前傾を保ち、足裏全体で接地するようにする
- 動作を10回繰り返す
Level.1 ミニハードル走
- ミニハードルを等間隔で置く
- ミニハードルの間隔…男性→1.5~1.8m 女性→1.2~1.6m
- ミニハードルの間をまたぐように走る
- 足を素早く引き戻し、膝を前に出す意識をする
- 横から見たとき、足の回転が重心線より前で回すようにする
スポーツ別に応用する
最後に、ヒップロックとフロントサイドメカニクスを色々なスポーツに適応できるようにしましょう。
陸上競技のような前方のみ進むスポーツは、先ほど紹介した方法だけでもOKです。
しかし、球技スポーツは前後左右動かなければなりません。特に左右の動きに対して、ヒップロックによる強いスタートダッシュができるようにしましょう。
Level.1 ウォールドリル①
- 体側を壁に向けて、少し離れて直立する
- 壁側の手を壁につけ、頭から足まで一直線にしたまま壁にもたれる
- 壁側の足を後ろに引き、そのままもも上げをする
- 壁と反対側の腕をしっかり振る
- このとき、壁側の横腹と反対側の臀部に力が入ると良い
- 動作を10回繰り返す
- 反対側も同様に行う
Level.2 ウォールドリル②
- 体側を壁に向けて、少し離れて直立する
- 壁側の手を壁につけ、頭から足まで一直線にしたまま壁にもたれる
- 壁側の足を後ろに引き、もも上げをしながら体幹を壁に向ける(方向転換する)
- 壁と反対側の腕をしっかり振る
- このとき、壁側の横腹と反対側の臀部に力が入ると良い
- 動作を10回繰り返す
- 反対側も同様に行う
Level.3 フロントランジ
- 両手を合掌し、直立姿勢をとる
- 右足をもも上げする
- このとき、ヒップロックを意識する(右横腹・左臀部の筋肉を使う)
- 右膝下を若干前に出し、そのまま右足を地面につける
- 地面につける場所を中央→右→左とずらす
- このとき、上半身は45度くらい前傾する
- 右足が着地するとき、右膝が前に出過ぎたり、上半身が倒れ過ぎたりしない
- 右足のハムストリングスや臀部筋に力が入ると良い
- 動作を10回繰り返す
- 反対側も同様に行う
Level.4 マーク走
- スタートラインから自分の足3歩くらいのところからマーカーを置く
- 1個目のマーカーから、さらに足3~4歩くらいの間隔でマーカーを置く
- 合計3~5個マーカーを置く
- スタートラインに対して体側を向けてセットする
- 方向転換をしながらスタートする
- マーカーの間に足が着くように、スタートダッシュする
- 横腹と臀部の筋肉を使うように意識する
まとめ
どうやって速く走ることができるか?という問題は、今は科学的に解明されつつあります。
今回紹介したトレーニングを行えば、どんな人でも速く走るためのカラダの使い方が獲得できます。
ただし、走る速さは筋力にかなり影響されるので、基礎的な筋力トレーニングなども必要です。
- 走ること=片足ジャンプの連続
- ヒップロックとは、片足立ちの際に強力な鉛直方向への力を発揮させる理論
- フロントサイドメカニクスとは、ハムストリングスによる強力な前方推進力を得るための理論
- 基礎的な筋力トレーニングも行うこと
