皆さんこんにちは!
HIIT(ヒート)というトレーニングをご存知ですか?
SNSやメディアで流れてくることが多いですが、果たして科学的根拠はあるのでしょうか?そして、どのようなメカニズムで効果を発揮しているのでしょうか?
分かりやすく解説していきます!

hiro
今回の記事はこんな人にオススメ!
- HIITをやってみたい
- ダイエットや心肺機能向上をしたい
- 運動不足だけど運動する時間がない

HIITとは?
HIIT=High Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)が正式名称です。
高強度なので、ある程度のキツさが必要です。
運動様式
インターバルトレーニングは、運動と休息を繰り返し行うトレーニングです。
例えば、30秒間の運動と10秒間の休息を1セットとし、15セット連続で行うことでトータル10分間の運動にします。
運動の種目は自由に選択できます。ランニングやバイクでも良いし、自重の腹筋やスクワットでも良いです。
よくスポーツ選手が行う方法として、全力に近いスプリント(疾走)のみを繰り返しやるといったキツい方法があります。
曖昧な情報
高強度であることが前提ですが、強度の設定は明確になっていません。
スポーツ選手が行うときには、最大限の強度で運動を行うことがほとんどです。疲労困憊になって倒れるくらいの感じです。
健康増進を目的とするときには、スポーツ選手が行うものよりも強度は低くなります。
研究では、30秒以下の短インターバル、5分以下の低ボリューム、4週間以下の短期間のHIITは、特に一般成人にとってVO₂max向上のための効果的かつ時間効率の高い方法であると報告されています。
しかし、VO₂maxを最大限に高めるためには、2分以上の長インターバル、15分以上の高ボリューム、4~12週間の中〜長期のHIITが推奨されています。
つまり、スポーツ選手は一般人よりも運動時間を長くする必要があるということです。
VO₂max=最大酸素摂取量とは、心肺機能の測定に用いられる指標です。VO₂maxが高いほど、心肺機能が高いと言われています。
その他の論文でも、スポーツ選手のパフォーマンスアップを達成するには、第二乳酸閾値(OBLA)よりも高い運動強度が必要であると述べています。
OBLAとは、運動による血中乳酸濃度が急激に上昇するポイントです。運動強度の上昇により血中乳酸濃度がOBLAに達すると、筋肉の疲労により運動の継続が困難になります。つまり、スポーツ選手はめちゃくちゃキツい状態まで追い込む必要があります。

正確な“キツさ”をモニターする
キツさというのは、個人差があります。プロスポーツ選手と運動不足の一般人を同じメニューでやって、果たして効果は得られるでしょうか?NOです。
「どれくらいのキツさで、どれくらいの時間やれば効果を高めることができるか?」が大切です。
キツさを正しく測定しながら運動する方法はいくつかあります。特に正確と言われているのは心拍数です。心拍数は、運動強度に比例して高くなります。
今は心拍数を計測できるスマートウォッチがあるので、アイテムを活用すると良いですね。
その他に、RPE(自覚的運動強度)というものもあります。これは主観的なところになりますが、キツさを数値化して計測します。RPEの数値に10をかけると、心拍数とほぼ同じになると言われています。

具体的には、スポーツ選手に対して効果を出すには最大心拍数の80%以上が推奨されています。
「最大心拍数=220-年齢」で計算できます。30歳なら、220-30×0.8=196なので、196拍/分まで心拍数を上げていきます。
- インターバルトレーニングとは、運動と休息を繰り返し行うもの
- 強度の設定が曖昧であるため、目的によって明確にすべき
- スポーツ選手は一般人よりも運動時間を長くすると良い
- 心拍数やRPEでキツさをモニターしながら行うと良い

HIITの効果
心肺機能の向上
HIITと一般的な有酸素運動(長時間継続する持久的運動)を比較した研究をまとめたものでは、HIITの方が心肺機能の向上に効果があると報告しています。
具体的には、ピーク酸素摂取量(peakVO₂)という指標が、一般的な有酸素運動よりも有意に改善します。peakVO₂とは、「これ以上運動強度を上げられないくらいの状態」における心肺機能の指標です。
前述したVO₂maxは、最大運動を継続した状態の酸素摂取量になるので、peakVO₂よりもキツい状態です。
健康な成人・肥満・高齢者・トップアスリートなど、さまざまな集団に対して効果があります。
特にスポーツ選手では、非常に強度の高いスプリントインターバルトレーニング(SIT)などを行うと、高い効果が得られます。
ダイエット・減量
HIITがダイエットや減量に効果があるという情報が出回っていますが、こちらも科学的に証明されています。
HIITと一般的な有酸素運動を比較すると、HIITの方がウエスト周径と体脂肪率が改善されるという研究結果があります。
中でも、ランニングでのインターバルトレーニングでは、脂肪減少効果がより高くなります。
心血管患者のリハビリテーション
心血管患者においては、動脈硬化の改善も期待できます。継続的な運動は、血管を拡張させる物質である一酸化窒素(NO)の産生が促進されます。
HIITは、短時間および短期間の運動にもかかわらず、動脈血管のNO産生の促進を介して動脈硬化度を低下させ,その効果の程度は有酸素性トレーニングと同じくらいあります。
つまり、長時間ずっと運動し続ける時と、10分程度のキツめの運動では、ほとんど効果が変わらないということです。
運動の時間が確保できない場合でも、HIITを行えば短い時間でも効果が得られます。
糖尿病の改善
運動を行うと、筋肉が血液中にある糖分(血糖)を取り込み、エネルギーとして使われる機能が向上します。血糖を筋肉に輸送するGLUT-4という機構が活性化されるためです。
HIITは、一般的な有酸素運動よりもGLUT-4の活性化が高くなると言われています。
糖尿病患者に対する研究では、毛細血管血糖値、食後血糖値、24時間の血糖プロファイル、および血圧の低下などが観察されました。
つまり、HIITは安全で効果的に糖尿病改善も行えるということです。

注意点
HIITを行う上で注意してほしいことがあります。
まず、心疾患のある方は安全性が確立されていません。HIIT実施後に突然死の危険性があると報告されています。実施したいときは医師やトレーニング専門家に相談してください。
また、運動習慣のない人は運動中もしくは運動直後に心筋梗塞を発症する危険性も指摘されています。基礎疾患があり不安な方は、医師やトレーニング専門家に相談してください。
TABATA Training
HIITの一つに、日本人研究者の田畑泉氏が提唱するタバタトレーニングという方式があります。
タバタトレーニングはスポーツ選手にオススメの方式です!
概要
タバタトレーニングとは、20秒間の運動と10秒間の休憩を1セットとし、7~8セット目で完全に疲労する強度で行うトレーニングです。
特に、運動様式は自転車もしくはランニングに限定されます。
インターバルトレーニングでは、スクワットやバーピージャンプなど異なるトレーニングを組み合わせる方法があります。この方法は、運動強度の設定が曖昧になり、心肺機能の指標であるVO₂maxや最大酸素借(MAOD)の効果に対して不十分です。
MAODとは、無酸素性運動能力の指標です。ほとんどのスポーツは無酸素性運動を伴うため、スポーツ選手の身体能力の測定に用いられます。
タバタトレーニングは7~8セットで被験者を疲労困憊させる強度のトレーニングなので、主に自転車(エアロバイクなど)を使用します。
効果
一般的なHIITとの大きな違いとして、タバタトレーニングは有酸素系能力と無酸素系能力の両方を向上させることができます。
タバタトレーニングを用いた研究では、最終セットのときに酸素摂取量がVO2maxに到達し、トレーニング中の酸素負債の蓄積量はMAODに相当したと報告しています。
VO2maxは有酸素能力の指標で、MAODは無酸素能力の指標です。この両方にストレスを与えることができているため、トレーニング効果が得られます。
人間がカラダを動かすためにはATP(アデノシン3リン酸)という細胞のエネルギーを供給しなければなりません。エネルギー供給の仕組みは、有酸素系と無酸素系の2つのみです。タバタトレーニングを行うだけで、エネルギー供給の全てを向上することができます。
エネルギー供給の詳細は別の記事を参考にしてください。
まとめ
HIITについてをまとめましたので、重要なところを押さえましょう!
- HIITの効果として、心肺機能の向上・減量・心血管患者のリハビリテーション・糖尿病の改善があげられる
- スポーツ選手は強度設定を高くする(15分以上の運動時間・OBLA以上の強度)
- 心疾患などの基礎疾患がある人は、始める前に専門家に相談すべき
- 正確なキツさを測定すべき(心拍数・RPEなど)
- タバタトレーニングは、有酸素系能力・無酸素系能力の両方を向上させることができる

参考文献
Effects of different protocols of high intensity interval training for VO2max improvements in adults: A meta-analysis of randomised controlled trials Daizong Wen et al. J Sci Med Sport 2019 Aug;22(8):941-947. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30733142/
Evidence-Based Effects of High-Intensity Interval Training on Exercise Capacity and Health: A Review with Historical Perspective Muhammed Mustafa Atakan et al. Int J Environ Res Public Health 2021 Jul 5;18(13):7201.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34281138/
Guidelines for the delivery and monitoring of high intensity interval training in clinical populations Jenna L Taylor et al.Prog Cardiovasc Dis 2019 Mar-Apr;62(2):140-146. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30685470/
Effect of High-Intensity Interval Training vs. Moderate-Intensity Continuous Training on Fat Loss and Cardiorespiratory Fitness in the Young and Middle-Aged a Systematic Review and Meta-Analysis Zhicheng Guo et al.Int J Environ Res Public Health 2023 Mar 8;20(6):4741. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36981649/
Tabata training: one of the most energetically effective high-intensity intermittent training methods Izumi Tabata The Journal of Physiological Sciences Volume 69, Issue 4, July 2019, Pages 559-572 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1880654624004001?via%3Dihub