この記事のトレーニーレベル

初心度
難易度
脳筋度
脳筋度とは、筋トレに対する知識がどれだけ高いかを示す運営者独自の数値です

みなさんこんにちは!

今回は難易度が少し高めのお話になります。パワークリーンについて紹介します。

パワークリーンはバーベルトレーニング初心者の方には難しい種目になります。ですが、これをマスターできればトップアスリートのようなパワーを手に入れることができます!

ぜひマスターしてみましょう!!

hiro

今回の記事はこんな人にオススメ!

  • スポーツで強くなりたい
  • 全身のパワーアップをしたい
  • レベルの高いバーベルトレーニングをしたい

パワークリーンとは?

クリーンを知っているという方は多くはありません。バーベルトレーニングの中でも難易度が高く、指導できる人も少ないからです。

まずは概要を紹介します。

「クリーン」という種目の中の一つ

スクワットには、フルスクワットやパーシャルスクワットなどやり方によって名前が変わります。同じようにクリーンにも、パワーを向上させることを目的としたものがパワークリーンと呼ばれます。

通常のクリーンは、ウエイトリフティングという競技で行われる動きなのでかなり難易度が高くなります。スクワットクリーンやスプリットクリーンと言います。おそらく一般的なトレーニーや、馴染みのないスポーツ選手もマスターするには時間がかかります。

パワークリーンは、文字通りパワーの能力を向上させるために行います。パワーという言葉の本来の意味は後述します。

スポーツのための体力を向上させるには、パワーが必要です。なのでこの記事では、パワークリーンを主に扱います。

全身の筋力アップができる

クリーンはデッドリフトのポジションから、バーベルを引き上げて肩に乗せます。

デッドリフトで生み出した力を上半身へ、そしてバーベルへ伝達します。全身の筋肉を連鎖的に使うことで、このトレーニングが可能となります。

スクワットやデッドリフトと同様に、力の源は股関節です。股関節にある強力な筋肉で生み出した力を、体幹や腕を通じてバーに伝わり、バーが引き上がります。

スポーツのパフォーマンスアップができる

クリーンはデッドリフトの動きから素早くバーベルを引き上げ、肩に乗せます。素早くというところがポイントです!

スポーツでは日常生活以上の負荷が体にかかります。その負荷をうまくコントロールすることで、速く走ったり、高くジャンプすることができます。

このコントロールには、速さが関わります。ほとんどのスポーツでは、ゆっくりとした動きではなく素早い動きが要求されます。速さに対応できる体づくりは、素早い動作が含まれたトレーニングが必要です。

クリーンやスナッチ、ジャークといった速さが必要なバーベルトレーニングを行うと、スプリントや垂直跳びといったスポーツパフォーマンスに良い影響が出ると言われています。

瞬発力がアップする

瞬発力という言葉は、スポーツ選手であれば一度は聞いたことがあると思います。瞬発力なしではスポーツはできません(なくてもできるスポーツは一応ありますが…)。

瞬発力は、やはり速さが必要です。“どれだけ速く体を動かすことができるか”という意味です。

速さを向上させるパワークリーンは、瞬発力を向上させます。

パワークリーンをやってみよう!

それでは実際にパワークリーンをやってみましょう。

最初からいきなり全ての動きを行うのは難しいので、いくつかに分割して練習します。

1.基本姿勢〜キャッチ練習

STEP1
基本姿勢をとる
  • バーベルが足底の中央にくるように立つ
  • 足を肩幅程度に開き、つま先を少し外側に向ける(デッドリフトとほぼ同じ)
  • 肩幅よりやや広めにバーベルを持ち、立ち上がる
  • 肘はまっすぐに伸ばし(前腕が内側に回旋する)、胸を張る→ハングポジション
STEP2
キャッチ姿勢をとる
  • ハングポジションからバーベルを肩に乗せる(持ち上げ方はなんでもよい)
  • ハングポジションより足幅を広めて、つま先を外側に向ける(スクワットとほぼ同じ)
  • 肘を前方に突き出し、上腕ができるだけ地面と平行になるようにする
  • バーベルが三角筋前部(肩の前側の盛り上がった筋肉)に乗る→ラックポジション

ハングポジション・ラックポジション

ここで覚えてもらいたいのが、基本姿勢のハングポジションと、キャッチの時に必要なラックポジションです。

デッドリフトからクリーンに移行する間がハングポジションです。この時のポイントは“肘を伸ばす”ことです!クリーンのパワーの源は股関節です。腕でバーベルを挙げようとしないでください。肘が曲がると、腕で挙げるクセがついてしまいます。

フィニッシュの姿勢がラックポジションになります。クリーンはとても速い動きで行われるため、ラックポジションを速くかつ正しく実行しなければなりません。変なクセがついてしまうと、手首や肘を痛めてしまいます。必ず事前に練習しましょう!

2.セカンドプル練習

STEP1
ハングポジションをとる
STEP2
ジャンピングポジションをとる
  • ハングポジションから、膝を若干曲げながらお尻を後ろに突き出す
  • バーベルが太ももの真ん中あたりに当たる
STEP3
セカンドプル
  • ジャンピングポジションから天井に向けてジャンプする意識で立ち上がる
  • 腕を使わずにバーベルが胸の前に浮き上がる感覚をつかむ
STEP4
フィニッシュ
  • 腕の力を抜いて胸まで浮き上がったバーベルをそのまま下ろす
  • バーベルを落とさないように気をつける

ジャンピングポジション

ここで覚えてもらいたいのが、クリーンを行う上で特に意識したい“速さ”を生み出す姿勢である、ジャンピングポジションです。

この姿勢は、ヒップヒンジにより股関節周りの強力な筋肉を使うことができます。バーベルを股関節周りの筋力で加速させ、胸の高さまで浮き上げます。

気をつけるところは、肘を伸ばした状態でバーベルが太ももの真ん中に接していることです。

クリーンではバーベルの軌道が足底の中央より直上が理想的です。そこからズレるとモーメントが発生し、余計な力が必要になります。ほとんどの人は、太ももの真ん中がちょうど足底の中央より直上になります。

3.ジャンピングポジション〜キャッチ練習

パワークリーンの中で特に難しい局面が、ジャンピングポジションからキャッチまでのところです。速い動きの中で正しいフォームを行うことは、ある程度の練習が必要です。

STEP1
ハングポジションをとる
STEP2
ジャンピングポジションをとる
  • ハングポジションから、膝を若干曲げながらお尻を後ろに突き出す
  • バーベルが太ももの真ん中あたりに当たる
STEP3
セカンドプル
  • ジャンピングポジションから天井に向けてジャンプする意識で立ち上がる
  • 腕を使わずにバーベルが胸の前に浮き上がる感覚をつかむ
STEP4
キャッチ(ラックポジション)
  • バーベルが胸の前まで浮き上がったら、一瞬で手首を返してラックポジションをとる
  • 同時に足幅を少し広げ、膝を曲げて姿勢を安定させる

4.パワークリーン

それではいよいよパワークリーンを通してやってみましょう!

STEP1
デッドリフトのスタート姿勢をとる
  • フォームが安定してきたらプレートをつける(床からバーベルが20cm程度の高さが理想)
STEP2
デッドリフト→ジャンピングポジション
  • デッドリフトと同様にバーベルを持ち上げ、ジャンピングポジションをとる
  • 肘が曲がらないようにする
  • この局面はゆっくりでもよい
STEP3
セカンドプル
  • ジャンピングポジションから天井に向けてジャンプする意識で立ち上がる
  • 腕を使わずにバーベルが胸の前に浮き上がる感覚をつかむ
  • なるべく速く立ち上がる
STEP4
キャッチ(ラックポジション)
  • バーベルが胸の前まで浮き上がったら、一瞬で手首を返してラックポジションをとる
  • 同時に足幅を少し広げ、膝を曲げて姿勢を安定させる

デッドリフト〜ジャンピング

デッドリフトによりバーベルを床から太もも中央まで持ち上げる時は、素早く持ち上げる必要はありません。この局面では安定してバーベルを太ももまで持ち上げることができれば良いです。

それよりも、肘を伸ばして腕の力に頼らないようなフォームを意識する方を優先しましょう

デッドリフトのやり方は別の記事を参考にしてください。

まとめ

パワークリーンは、デッドリフトやキャッチなど様々なトレーニングスキルが要求されます。いきなり実践するのではなく、分割しながらフォームを完成させると良いでしょう。

最後にパワークリーンのポイントをまとめましたので、確認しましょう!

パワークリーンまとめ
  • スポーツに必要な速さを鍛えることができる
  • ハングポジションでは肘を伸ばして腕が力まないようにする
  • ジャンピングポジションでは太ももの中央にバーベルがくる
  • セカンドプルをなるべく速く行う
  • ラックポジション(キャッチ)では肘をなるべく前方に突き出す

パワーとは何?

「パワー」というワードは、一般的に使われる日本語と、本来の意味であるPOWERとは若干の違いがあります。

ここからは指導者の方は必ず知っておきたいPOWERについて解説していきます。

日本語で使われるパワー

本来のパワーの意味を知らない人は、ベンチプレスを100kg挙げることができる人も、サッカーのキックが強い人も「パワーがある」と言います。これは間違いです。

大まかに捉えると、重いものを持ちげるとか、力強いとか、速さがあるとか、こういった意味でパワーを使うことが多いです。

人体の運動(バイオメカニクス)におけるPOWER

それでは、トレーニングを教える側の皆さんに知ってほしいPOWERを解説します。

生物(特に人間)の体の動きや力学的な特性を、物理学や力学の原理を用いて解析する学問分野があります。バイオメカニクスと言います。

簡単に言うと、生物の動きや構造がどのように力を受けたり発生したりするのか、そしてその動きがどのように効率的か、または安全かを理解するために研究されます。

このバイオメカニクスの観点から言われるPOWERが、筋トレの効果やスポーツのパフォーマンスに関係します。

POWERの意味

それでは、バイオメカニクスにおけるPOWERの求め方を解説します。

POWERは仕事率と表現され、「単位時間あたりにどれだけの仕事量(J)ができたか」という意味があります。

“仕事”と言ってますが、ここでは「物体に力を加えてどれだけ動かしたか」という意味があります。決してお金を稼いでるわけではありません。

つまり、『POWER(仕事率)=単位時間あたりに物体に力を加えてどれだけ動かすことができたか』ということになります。

POWERの求め方

物理の公式を使ったお話になるので、頑張ってついてきてください!

仕事量(J)は「力(F)×距離(m)」の式から求めます。

そして、仕事量(J)を時間で割ると仕事率(W)が求められます。

つまり、仕事率(W)=力(F)×距離(m)÷時間(s)という式で求めることができます。この時の時間とは、1秒間で定義されます。文字通り、仕事をどれくらい効率よく行ったかという意味があります。

この力(F)×距離(m)÷時間(s)という部分ですが、距離(m)÷時間(s)は速度(m/s)に変えることができます。そうすると、最終的な式が完成します!

POWER:仕事率(W)=力(F)×速度(m/s)

この式からわかるように、POWERを求めるときには速度が関係します。つまり、どれだけ物体を速く動かすことができるかが、POWERの大きさに影響するということです。

筋トレでは、ベンチプレス100kgを5秒で挙げる人と、1秒で挙げる人とでは、1秒で挙げる人の方がPOWERがあると表現します。

このPOWERの大きさは、筋力増大や筋肥大の効果も高くなると研究結果が出ています。

近年では、速さを重視したトレーニングが注目されており、VBT(Verocity Based Training)という方法が確立されています。

VBTについては別の記事で詳しく解説します。

フォース(FORCE)があると言ってみよう!

パワーが使えなくなると、とても高重量のベンチプレスを挙げている人を褒める時は、何と言えば良いか迷ってしまいますね。

褒めることもトレーナーの仕事です!!私個人が考えるのは、「フォース(FORCE)があるね」と言うのがマッチしていると思います。

フォース(FORCE)は、力(F)のことです。物体に与える力そのものなので、高重量のベンチプレスを挙げたときには「フォースがあるね!!」と褒めてあげましょう。

同じ重さでも、より速く挙げることができた人には、

ちなみに、バイオメカニクスではフォース以外にもトルクやモーメントと言われる作用が関係します。トルクやモーメントはバーベルトレーニングにおいて超重要です。これらも記事にしていきますので、お楽しみに!!

参考文献

スターティングストレングス Mark Rippetoe  (著), 八百 健吾  (監訳) 2019.4.5

VBT トレーニングの効果は「速度」が決める 長谷川 裕  (著) 2021.7.19